論文 Who should be Regulated: Genuine Producers or Third Parties? が採択され公開されました

2022/12/6 1分で読める

論文 “Who should be Regulated: Genuine Producers or Third Parties?” が学術雑誌 Journal of Economics に採択され、オンライン公開されました。

研究の背景

プリンタのインク(純正カードリッジ vs 非純正汎用カードリッジ)や高級ブランド品(純正バッグと偽物)、コンピュータアクセサリ(認証ケーブルと非認証ケーブル)など、純正品(ブランド品)と非純正品(サードパーティ or 模倣品)が市場に供給されている商品は

多くあります。このような市場では、純正品メーカーがサードパーティ製品を市場から追い出そうとする戦略がよく見られます。一つは、比較広告を行うことで「純正品の方が品質が良い」と消費者に思わせるよう宣伝する戦略であり、もう一つは技術的障壁を設定することで実際にサードパーティのインクやケーブルを「使えなく(にくく)する」ことです。

何をやったの?

このような純正メーカーの行動を、政府は規制するべきでしょうか?また、そもそもそのようなサードパーティの参入自体も規制するべきでしょうか?この研究では、水平 & 垂直的製品差別化を含んだ、既存企業とサードパーティの参入企業の競争を描くシンプルな理論モデルで、それらの効果を分析し、その競争政策上の政策的含意を考察しました。

何がわかったの?

まず、政府の介入がない状況では、純正メーカーは社会厚生最大化の視点からは過剰な広告宣伝と技術的障壁の設定を行うが、低い水準の比較広告や技術的障壁は厚生を改善する可能性があることが明らかになりました。これは、比較広告や技術的障壁は、消費者の誤認や費用の増加というネガティブな効果があるものの、サードパーティ製品から純正品への消費のシフトを起こすことで、独占的な価格設定による供給不足を改善する効果があるためです。また、広告と技術的障壁の設定は補完性があるため、政府は両方の戦略を完全に禁止することが、どちらか一方を禁止する場合や介入なしの状況と比べて、厚生を改善することがわかりました。

また、サードパーティの参入自体を規制することが、厚生を改善しうることも明らかになりました。サードパーティの参入は競争を促進する良い効果があるものの、それにより純正メーカーの比較広告や技術的障壁設定のインセンティブを与えてしまうからです。つまり、参入禁止はそれらの「サードパーティを追い出すためだけの」無駄な費用を社会的に節約してくれる効果があるわけです。この結果は、サードパーティと純正品の「真の」品質格差、広告や技術的障壁のコスト構造、市場規模に依存することも明らかにしました。

これらの定性的結果は、競争政策において重要な政策含意を持つと考えられます。